結局、「可憐ちゃん、お昼をご馳走するから」と約束をして業務を始めた。
これ以上何を言っても誰の得にもならないから、黙るしかなかった。

幸い、水曜日の今日は仕事が落ち着いている。
よほどのトラブルがない限りお昼も順調にとれるはずだから、そこで謝ろう。

私も昨日からのメールを確認し、溜った事務作業をこなしていく。

ブブブ ブブブ。
あ、外線だ。

「もしもし、営業一課です」
若手の小熊くんが出た。

「お世話になります。・・・はい・・・はい・・・ええ?」
だんだん険しい顔になっていく。

どうやらトラブルみたい。

小熊くんは入社2年目の24歳。可憐ちゃんと同期で、かわいい男の子。
仕事はできるんだけれど、まだ少し学生っぽさが残るのが難点かな。
指導係の私としては、危なっかしくて目が離せない。

ん?
チラチラと視線を送ってくる。
ただ事じゃないみたい。
「あ、あの、少々」お待ち下さいを言わせてもらえない。

『どうしたの?』
デスクの前まで行き、紙に書いた。
小熊くんは困ったようにキョロキョロした後、
『商品が届かない』
走り書きする。

は?
それは・・・

『どこ?』
と書いた私に、
『山通』と大手の取引先の名前を書き、
「ま、待ってください工場長」
と叫んだ。

って事は、電話の相手は山通の田中工場長かあ。
ったく。