次は〇〇駅〜、次は〇〇駅〜。

次の降りる駅の名前がアナウンスされると

我に返った。

慌てて降りる支度をすると、何かしら声が聞

こえてきた。

『お母さん。お母さん、頑張れ…。』

それは、いつも聞く声とは少し異なり、弱々

しい声だった。

私は、辺りを見渡すと誰だか一発で分かっ

た。

ちょっと離れた、斜め横に立っている妊婦さ

んだ。

声は、とても弱々しく子供声はだったので、

きっとお腹の中にいる赤ちゃんだと気づい

た。

妊婦さんは、少しヨロヨロしているのに、誰

も席を譲らず、目の前にはスマホをいじって

る若者が座っている。

私は、それを見ていると若者に対してイライ

ラが止まらなかった。

私も、もう降りるし席を変わってあげたいと

思ったが距離が遠すぎるので、離れた瞬間に

他の人に座られてしまう可能性がありそうだ

と思い、考え込んだ。

妊婦さんは、苦しそうだったので、私は席か

ら立ち上がり、自分のカバンを席に置き、誰

も座らせないようにしてから妊婦さんの元に

向かった。

「あの、良かったら座ってください。」

「…え?」

私は、席を指差し、背中を支えながら誘導し

た。