瀬王さんを怒らせたら、私の命は多分きっとない。




普段も無表情で何考えてるのかわからない人だから·····。




瀬王さんの機嫌取りを必死にやっている。




私のさっきの発言は、瀬王さんの癇に障ることはなかったみたいで、無事に今日1日を終えた。




「ありがとうございました」

「あぁ」

「では·····行きますね」




車から降りて、開けられた窓の奥の瀬王さんにさよならを告げる。




まるで義務のように、1ヶ月後また会うのだけれど。




いつものよつにペコりと会釈をして瀬王さんを見送る。




·····つもりが、なかなか発進しない車を見て不思議に思っていると。




「·····廉」

「あ、はい」

「これも受け取れ」

「えっ!?」




突然投げないでください!




なんとか瀬王さんからの豪速球をキャッチして、握りしめた手のひらを開ければ。




投げられたのはチョコレートだった。




「ゆっくり休め」




それだけ言った瀬王さんは、運転手さんに車を走らせた。