その顔、もっと見せて?

矢野さんに廉ちゃんを取られた。




今がいい感じなのに、これ以上距離離されたら困る·····!




どうした俺。




落ち込んでる場合じゃないだろ。




廉ちゃんを振り向かすんじゃなかったのか!




そんな時、ちょうどいいタイミングで席を外した矢野さん。




廉ちゃんが1人になった。




チャーーーーーンス!




「廉ちゃん、困ってることない!?」

「·····ないです」

「それ、絡まってない?」

「絡まって·····。壊した、かも·····弁償?」

「ちょっと見せて」




初心者はやりがちなミスなのに。




廉ちゃんがあたふたしてるから、これは俺の出番だ!




俺に任せて、廉ちゃん!




「直る?」

「まぁ、見ててよ」

「·····え、動いた」

「うまくやんないと、ここすぐ絡まって壊れるから気をつけて」

「壊したかと思った·····」




ホッとする廉ちゃんの役に立ってよかった。




ほとんど無意識に、廉ちゃんの頭をポンポンする。




すぐに自分のやってしまった行動に気づいて、やらかした·····と手を離すと。




「あ、ありがとう·····福智」




いつもは素直じゃない廉ちゃんが、そう言って上目遣いを見せてきた·····。