その顔、もっと見せて?

なにかもっと、深い理由があるように感じてしまった。




ここへ来てまでその偽りの仮面を外すくらい、椎名さんの抱えているものはなに?




こんな時に聞こえた予鈴の音を合図に、椎名さんは元の状態に戻り始めていて。




この短い時間で、椎名さんについて知れたことはなかった。




「鍵閉めるから、早く出てくれない?」

「その鍵って、盗んだもの?」

「人聞きの悪い。スペアよ」

「同じ感じもするけど」

「黙って」




きっちり優等生の姿になった椎名さんは、優等生ではないのかもしれない。




悪いこともしてそうな、キケンな香りを秘めている気がする。




ますます、椎名さんから目が離せなくなるな〜。




次の授業中は、珍しく起きてた。




なぜなら、隣の席の椎名さんを見つめるため。




視線の先は、黒板かノートのどちらかで。




こんなに授業をまじめに聞いている人を、俺は生まれてこの方初めて見た。




こんなに見てるのに、俺の方は一切見ないね。




なんかちょっと、寂しい?




「·····え、なに?」

「昨日約束した絵しりとりだよ」

「約束した覚えないんだけど」

「しりとりのりから始めた〜」

「邪魔しないでくれる!?」




ルーズリーフの上に描いたりんごの続きを、はたして椎名さんは描いてくれるのか。