その顔、もっと見せて?

びっくりしたのはその後だった。




まったく表情の読めない琉衣が、ももを夏祭りに誘い始めた。




なんの意図あって!?




「なんで琉衣なんかと行かなきゃいけないの!?」

「なんかってなんだよ。ありがたく思えよな」

「意味わかんないし!」

「じゃあ1人寂しく行けよ。周りのカップル見て悲しくなるだけのとこにな」

「なっ·····」

「眞皇は彼女いんだって。とっとと諦めて俺と祭り行けばいいだろ」




少々強引にも捉えられる言い方だけど、それが琉衣なわけで。




ま、なんとなくだけど、そういうことかって。




琉衣はもものこと好きなのかな、なんて。




勝手な兄貴の勘がはたらいた。




「·····奢ってくれるの?」

「なにを」

「りんごあめとわたあめ」

「安いもんだな」

「あとたこやきとかき氷。·····カステラも」

「はいはい。んじゃ、俺は風呂入ってくる」




あのももが黙った。




やるな、琉衣·····。




思わず、風呂場へ向かう琉衣の背中を拝んだ·····。