《廉》




毎日が煩わしくて、どこかで息抜きしないと生きていけないくらい。




優等生。




この学園の理事長を父に持つ私は、その言葉を背負って日々過ごしている。




成績は常にトップで、手抜きは絶対にしてはいけない。




そんなことすれば父にすぐにバレて呼び出される。




私は優等生の仮面をかぶって、他生徒からの模範となる存在でいなくてはならないのだと。




父が毎日そう私に教えこんでいた。




正直、息が詰まりそうだ。




しっかりと着こなした制服も、綺麗に結われた髪の毛も、もうクソくらえ。




「はぁ·····」




鉄の柵に腕をかけてため息を吐く始末·····。




屋上は私の唯一の息抜きの場。




ここを奪われたら、私の休める場所はもうない·····。




こうなったら、もう何もかも捨ててしまおうか。




そっちに思考が傾くくらい、私は追い詰められているらしい。




クルリと体の向きを変え、フェンスに腰掛ける。




いつものように慣れた手つきで、第一ボタンを外し、髪を解き。




父からの言いつけでかけ始めたメガネも外そうと手をかけたその時だった。




「へ〜、椎名〈シイナ〉さんってめちゃくちゃ美人なんだね」




どこからかそんな声が聞こえれば、体はビクッと反応して。




メガネにかけた手は外さず体の横に下ろされた。