それから数日後、旬たち教官は相変わらず問題児の美竜に悩まされていた。まあ、美竜が急に優等生になればそれはそれで怖いと旬は思っているのだが……。

「すみませ〜ん……」

まだ高校生がやって来ないお昼頃のこと、一人の女性が自動車学校の受け付けに現れた。歳は旬たちと変わらなさそうだ。着ている服は上下ともにジャージで、メイクもしていないようだ。

「入校したいんですけど……」

「は〜い」

珠美が受け付けの女性の前に行くのを、旬は仕事をしながら眺めていた。しかし、珠美と女性は互いに嫌そうな顔をする。

「太宰さ〜ん!やっぱり代わって〜!!」

珠美が急にそう言ったため、「は?」と旬は呟いてしまった。しかし、その声は珠美にも女性にも幸い聞こえていなかった。

「わかりました……」

旬は椅子に座る女性の前に座り、書類を渡したりし始める。女性の名前は宮部和恵(みやべかずえ)と言うらしい。仕事の都合で車の免許が必要になったそうだ。