SIDE 志勇



無表情。

無感情。

無頓着。


俺の懐に収まっている女は、一向に心を開こうとしない。


毎晩うなされる度になだめようと、いくら声をかけたとしても、返ってくるのは素っ気ないものばかり。


毎日のように抱きしめても、これまで一度たりとも、壱華が抱き返してきたことはない。


こんな女初めてだ。




俺は極道の跡継ぎという、運命のもと生まれた。


幼いときより人の汚い部分ばかり見てきた。


妬み、憧憬(しょうけい)、憎悪、数多の感情をぶつけられ、敵は絶えることがなく、女は吐いて捨てるほど寄ってくる。


女なんて、都合がよければ抱くだけ。


俺にとって女など、性欲処理の道具程度にしか見ていない。



だというのに、この状況はなんだ。


ひとりの女に手こずっている。


面倒なら捨ててしまえばいいのに、なぜか手放せない。


その理由はひとつだけなら挙げられる。



それは、壱華が『俺を見ない』ことだ。