SIDE 実莉




「……どうなっている」




胃をギュッと掴まれるような恐怖を呼び覚ます、怒りに震えた魔王の低い声。


凍てつくような寒さと外を吹き荒れる吹雪が、彼の恐ろしさを倍増させる。


ここは東北、宮城。魔王の根城。



「どうなってると聞いてんだ!」



苛立ちを隠せず、畳に拳を振り下ろす魔王。


ダン、と重い音が響き、その場にこうべを垂れる男たちは竦み上がった。


強い風が彼の心情に合わせるように吹き荒れる。




「おい、なぜあの女は姿を眩ませた。あの狼は娘をどこにかくまった」

「ひ、ひぃ……!」



誰も何も答えない部下に腹を立てた彼は、一番手前の男にゆらりと歩み寄り頭を掴んだ。



「みっともねえなぁ」

「がはっ!?」



怯えて口も聞けないそいつを、彼は次の瞬間床に叩きつけた。


ああ、なんて乱暴的。


なんて、どごまでも横暴で危険で、こんなにも美しいんだろう。


どうしたらもっと、その獰猛な龍の瞳に実莉を映してもらえるのかなぁ。




「あれぇ、ここにもいない」



だから少し、仕掛けてみることにした。