「ねえねえ」



ちらほらと雪の降る夜だった。


クリスマスまであと2日。志勇の誕生日まであとあと5日と迫った今日。


いつもより早めに帰宅した志勇と何気ない時間を過ごしていた。


お風呂から上がったばかりの志勇は、ベッドの上で濡れた髪を拭いている。


その何気ない仕草に見惚れてしまうわたしは末期なのかな。


そんなこと思いつつ、お風呂上がりのあったたかい体に抱きつく。



「大胆だな、どうした」



彼の膝の上に対面する形で座ると、手を止めてわたしの体を抱き寄せてくれた。




「静かだね」

「……そうだな」

「このまま時が止まってしまえばいいのに」

「なんだそれ。どっかで聞いたことある台詞だな」



笑う志勇はわたしの胸に顔を押し付けてギュッと抱きしめてくれた。


くすぐったい感覚にあり、幸せを感じながら、わたしの心はあまりいい状態ではなかった。




「でも、そしたら……怖いものは何もなくなる。
黒帝や美花と実莉、極山や北の魔王だって、時間が止まってしまったら何も怖くない」


「安心しろ。俺がいる限り奴らは動けねえよ。
たとえ同じ道を歩く人間だろうと、俺のものに手を出せば容赦はしない」

「そう……」



弱音を論破する志勇は何も変わらず愛情を注いでくれる。


けども幸せすぎたこの3ヶ月は、逆にわたしの知識を積らせる結果となった。




「だけど『覇王』も動かないと言い切れる?」





それはたとえばこんなこと。