鼓膜を裂くようなブレーキ音が止む。


恐る恐る目を開けると、わたしはボンネットの上に跳ね上げられていた。


どうやら()かれずに済んだようだ。


手先と足先に力を入れると、動く。



「……大丈夫っすか!?」

「意識はあるか?(つよし)、俺が確認するから車を路肩によけろ」

「はい!」



身体の状態を確認していると、運転手と助手席に乗っていた男性が駆け寄ってきた。


そこで今の状況を思い出し、ボンネットからアスファルトの上へ転がり落ちた。



「だめです、動かないでください。私どもが病院に運びますので」



寄ってきた男の声はわたしには筒抜けだった。


早く逃げなきゃ。逃げないと殺される。


そればかり考えていて、ふと後部座席から姿を現した存在に、気づくことができなかった。








「……見つけた」








ふと、深みのある男の声が思考を停止させる。


なぜかその声は、錯乱しているはずのわたしに伝わり、自然と声の方に注目させた。


振り返ると、急に強い力で手首を掴まれた。