「ああ、分かった。こうすりゃ逃げねえな」



すると何かに(ひらめ)いた彼はわたしの腰を抱いて歩き出す。



「うわ!おいおい見ろっ」

(ぼん)が、あの坊がエスコートしてんぞ……」



同時に再度騒ぎ出す組員。


そんな感じで多くの目に晒されながら、ようやく玄関までたどり着くことができた。






「ようこそお越しくださいました。
壱華様でございますね?」



玄関先で迎え入れてくれたのは、背の高い黒髪の男性。


志勇より歳上と見られる彼は、中性的な整った顔立ち。


どこか儚げな色気を放出していて、志勇に見慣れていなければ気絶していたかもしない。


なんでこうも、ヤクザのくせして化け物並みのイケメンがそろってるんだろう。


志勇がいるからときめいたりはしないけど、美形に囲まれて常に息苦しいのは確かだ。




「初めまして、荒瀬組組長の側近に勤めております。鳴海司水(なるみ しすい)です。
若のご両親のもとまでご案内させていただきます」




司水と名乗る男の人は「どうぞ、お入りください」と手を差し伸べてきた。


あ、分からないと言っておきながら、こういう紳士的な男性ってタイプかも。