「やったね、今から壱華ちゃんと二人っきりじゃん」



2人がいなくなると嬉しそうに笑顔になる光冴。


頬の傷について詮索(せんさく)しない気遣いはありがたいと思った。


光冴はただの遊び人と勘違いされることが多いけど、実は黒帝のナンバー2だ。


普段は温厚で優しい。けれど怒らせたら無慈悲に人を傷つけることで知られている。


二面性のある彼が、わたしは少し、怖い。




「……理叶のこと、気になる?」

「どうして?」

「どうしてって、あいつ完璧じゃん?
喧嘩最強のくせして頭はいいし、顔もいい。
家は極道であいつは次期若頭らしいから、女の子だったら憧れるんじゃねえかなって」



だけど光冴は、意外とメンタル面が弱い。


理叶という強い男の隣に立っているものだから、悩むことも多いらしい。



「……憧れる?男を見た目だけに判断するような女なんて、大したことないよ」

「はあ、そう言ってくれんのは壱華ちゃんだけだよ。……あ、そうだ」



そんな光冴を励ますことがわたしにできること。


半年前、このバーで出会って話すようになった理叶と光冴。


ヒマがあればこうして来てくれる理叶と光冴は、絶望の中見えた光、まるで王子様みたいだった。