#11 欲しい



 どうしてあんたが来るの。

「ま、丸見え……?」

 動揺する井上に、

「そこから」

 窓を指差すアイツ。

「纐纈さんに迫ってましたよね」

 となりの建物――特別棟から、こちらの様子が見えたようだ。

「……っ、誤解だ」

 わたしから離れ、アイツに駆け寄る井上。

「誘われたんだ。俺は拒絶したのに、纐纈が誘惑してきた。どうしても俺がいいと」

 ――――!!

「見ただろ? この前、俺の腕に手を回してるとこ」

 すがるようにアイツを見上げる井上と、無表情で井上を見下ろすアイツ。

「困ったやつだよな。ほんと……。こっちは立場もあるし大人なのに。俺としたことが流されてしまった。男なら、わかるよな? 心と身体はベツモノだって」