「お前が冗談のつもりでも。井上が本気に受け取ったら?」

 目線にギリギリ被らない前髪から覗く鋭い目は、不覚にもキレイだと思った。

「……知らないよ。そんなの」

 地味男のクセに。
 わたしに説教するつもり?

「お前がどこで誰を(もてあそ)ぼうが俺には関係がない。痛い目にあっても自業自得だな」

 なんでそんな刺のある言い方するの。

「放っておいてよ」
「ああ。そうする」

 わたしから簡単に目をそらし背中を向けた当麻氷河は、

「待ってよ」
「なんだよ」

 名前のごとく、極寒で。

「……あんたさ。紙ヒコーキ、折れる?」

 その氷、溶かしてやりたくなったんだ。