「見ててくれたんだな」
「当たり前でしょ」
「そうか」

 当麻氷河が黙ってしまった。

 疲れているのだろう。

 ところで、いつまでベランダにいるつもり?

 部屋に戻るに戻れなくなった。

 ……少しでもこうしていたくて。

「成澤、もう寝た?」
「どうかな」
「起きてるの?」
「あの人。あれで結構、責任感強いから」
「え……」
「今夜は眠れないかもな」
「どうして」

 いい試合だったのに。

「せめて1点でもゴールして。来てくれたファン喜ばせたかったと思う」
「凄かったよ。十分。そりゃあ……ゴール決めたらカッコいいけどさ。成澤の絶妙なタイミングでのパスを、あんたが受け取って。そのまま裏から入れたわけで」
「その通りだ。ナリさんがパックを奪われていたらゴールは決まらなかった」
「だったら……」
「でも。そういうの、素人には伝わりにくい」
「伝わってるんじゃないかな」