#43 チサト


 別荘に戻ると、ロビーでミーティングをした。

 こんなときに天ちゃんが撮影してくれた動画は重宝する。

「足を揃えて打つ余裕ないときのシュートは。クロスオーバーの延長で素早く」
「対角のコース狙いっすか」

 真柴くんが先輩から、走りながらのシュートについて教わっている。

「必ずしも視線は狙う場所を向いてるわけじゃないってのは。もうわかったな?」

 フェイントのことだ。

「ほんと……どのタイミングでシュート来るか、わかったもんじゃないっすね」
「決まるときは。一瞬だ」
「それを止められたら。気持ちいいっすよね」
「もちろん入れたときもな」

 今回の合宿において

 複数のポジションを体験したことで、真柴くんのゴールテンダーとしての知見も広がったのではないだろうか。