#39 迷い


「ごめんなさい!!」

 完全に寝坊した。

 起きた頃には朝食なんてとっくに作り終わっていて、なんなら食べ終わってみんなストレッチを終えウエイトに向かったあとだった。

 筋力トレーニングをしてくるのだ。

「洗い物します!」

 おかしい。

 たしかに、わたしは寝不足だった。

 ほぼ徹夜で今日の朝を迎える気でいた。

 それでも起きる気でいたんだ。

 なのにセットしたアラームを、聞き逃した。

 やってしまった。

 天ちゃんが、冷たい視線をこっちに向ける。

 ごめんなさいごめんなさい。

「もう起きて大丈夫なの」

 と、藍さん。

「氷上練習行ったんでしょ」

 夜中にこっそり部屋を抜けたのバレてた。

「でかした」

 ……ん?

「いい動画おさめてきてくれたね!」

 頭を撫でられる。

 どうやらビデオを見たらしい。

 一秒も目が離せなかった。

 2人の一騎討ちから。

 瞬きをするのが勿体ないとさえ感じたくらい。

「纐纈さんのアラームを止めたのは藍川さんだよ」

 え!?

「でも、発動前に止めて休ませてあげようって言ったのは天ちゃんだよねー」

 天ちゃんが……?

「スマホはロックしてたはず」
「単純なパターンだから解除に1分もかからなかった。変えた方がいいよ」

なんてことだ。