こんなことを言ってはいるけど、そんなに酔っ払いっぽく見えないし。

 本気でわたしに何かする気は少しも感じられない。

 感じられたら問題ありすぎるがな。

 井上じゃあるまいし。

 シラフでもこうなんだろう、このひとは。

 成澤に少し似てる。

 言いたくないことがあると、誤魔化す。

「お酒って、美味しいですか?」
「大人になったらご馳走しましょう」
「リラックスできそうなイメージは、ありますけど。呑んでも呑まれるなって言いますよね」
「酒と煙草と女は。一度、溺れてしまうと簡単にやめられないものです」
「煙草吸うんですか?」
「吸いますよ」
「みんなの前では吸ってないですよね」

 先生から特有の臭いもしないし。

 あ、でも。

 甘い香りがする。

 タバコの臭いをごまかすための香水?

「一人のときはたいてい咥えてます。保健室の奥でも」

 校内は禁煙だぞ。

 いや、それ以前の問題だ。

「昔はどこでも吸えたらしいですが。今って喫煙者は肩身がせまいんですよね」

 有害だと教える立場なのに。

「酒とタバコと……オンナ」
「オフレコでお願いします」
「言えるか」

 だけど手当てが少ないとかそういう問題以外に、なにか、ありそうな気がする。

 先生がいまひとつアイスホッケーの顧問として情熱を注げない理由。