#34 条件


「ロークオリティーゲーム……?」

 それは、初めて聞く言葉だった。

 直訳すると

 ロー・クオリティ・ゲーム(質の低い試合)

「勝者にも敗者にも利益がない試合」

 そういって部屋に入ってきたのは、成澤だった。

「やっぱり浮気してるー。混ぜてもらおうかな」
「し、してない」

 イガラシさんの手から力が抜けたのがわかり、慌てて離れる。

「まさか五十嵐くんが身の上話を始めちゃうとは。火がついちゃった?」

 成澤は、部屋に鍵をかけ扉の横に立った。

 腕組みをして壁にもたれかかっている。

 口元は笑っていても――目が笑っていない。

「氷河に殴られても知らないよ」
「殴り合いなら。慣れてる」
「ボクシング始めたってホント?」

 ――――!

「そっちでやってくつもりなの? アイスホッケー棄てて?」
「成澤でも当麻には敵わなかったか。所詮は坊っちゃんだな。漢くさい喧嘩、したことないんだろ」

 険悪なムードが流れる。

「えー……。やだなあ。別に俺は敗北宣言してないよ。弱音は吐いちゃったけど。氷河がエリナちゃん泣かせたそのときは容赦しないし」
「なら、参加させてもらうか」
「お姫様争奪戦?」