「い……イガラシさ……」

 密着。しすぎです。

「フツウ。入ってくるか」
「ごめんなさい。でも。鍵、あいて……」

 万が一、倒れてたりとかしたら、怖いなーって。

「そういう意味じゃない」
「え?」
「不思議と。あんたのためなら、カッコ悪くもなれるし。本気だすのも悪くないと思えてくる」
「それって……」
「素直になりたいともな」

 ――素直に?

「聞いてくれるか。俺の昔話」

 頭を縦にふる。

「あ……でも。その前に。離してもらっても……」

 近い。

「自分さえ強くなれば勝ち続けられると思っていた」

 ――――!

「でも、そうじゃなかった」

 アイスホッケーは、個人競技ではない。

 団体戦だ。

「ある大事な試合の前に。怪我しちまって。試合出場できないどころかリハビリも必要で」

 どれだけ悔しかっただろう。

 大好きなアイスホッケーができなくなって。

「俺はチームの大きな戦力だった。俺をカバーできるほどのゴールテンダーはいなかった。結果、勝てる見込みの十分あったその試合は―― LQG(Low Quality Game)になった」