#32 拒絶


 キッチンでは、ぐつぐつ野菜を煮込んでいる鍋からいい香りが漂っていた。

「へえ。ジム行ったんだ、五十嵐さん」
「氷上練習までには戻るそうです」

 炊飯器をあけると、炊きあがったご飯から大きな湯気が出る。

 それをしゃもじでかきまぜると蓋を閉めたのは、天津さん。

「ついてってよかったのに」
「え!?」
「それで。口説きおとしてくれたらなあ」

 ――――!

「氷河のこと気になってるみたいだし。エリちゃんとも相性よさそうだし。2人で引き込んでもらえたら最高だなーって」
「イガラシさんがアイスホッケーをまた始めても。うちのチームには入れませんよね?」

 学校違うもん。

「いいのいいの。そこは」
「え?」
「あの人がアイスホッケーをまた本格的に始めるかどうかが重要なの」