「それで。誰が君の恋人なんです?」
「……え?」
「聞き方を間違えました。君に、たとえルール違反してでも恋愛したいと思わせた男は。どいつですか」

 なぜだろう。

 禁止じゃないとわかっても、この男にだけは教えたくない。

「わたし、力になってみせますから。今は初心者でも、必ず。学校の勉強は頭に入ってこないのに。アイスホッケーのことならすっと入ってくるんですよね」
「話題をそらしましたね」
「しつこい男は嫌われますよ」
「まあ、いいです。九分九厘あの部員だろう、とは目星がついているので」

 なんだと?

「体験入部の真柴くん。頑張ってると思いません?」

 リンク中央やゴール付近でパックを使って練習する選手。

 その傍らでスケート靴を履いてスケーティングの練習をする、真柴くん。

「よく転んでますね」

 たしかに。

「あれ?」
「どうされました」
「いや、真柴くんのスケート」
「スケート靴がなんですか」
「人に借りるって聞いてたんですけど。なんか……その割には年季が入ってないというか」
「おそらくは新しいものですね」