はやく帰らなきゃって思うのに――

「これ、かわいい」

 壁に飾られているピンバッジが気になる。

 ペンギンだ。

「知ってるよ。NHLのチームのロゴでしょ?」
「ああ」

 その声が、真横から聞こえてビックリした。

 ほんと気配ないやつだな!?

「なんていうか。当麻氷河の部屋は、アイスホッケーの博物館みたいだね」
「なんだそれ」
「ガレージにゴールもあったよね」
「あそこは練習スペースだ。特殊なタイルを敷いていて、スケート靴で氷上に近い練習ができる」

 本格的すぎるよ。

 いくらかけて作ったの?

「もっと広い練習スペースがあればな。ウエイトする場所も」

 欲しがるもののスケールがデカイな。

「このあたりで、こんなにアイスホッケー愛の溢れる家族……そういないんじゃない?」
「いねえな。狂ってるんだ、うちは」

 ホッケー狂いか。

「素敵じゃん」
「感謝してる。アイスホッケーに魅了されたあの頃から、この年まで続けさせてくれてること」
「それイガラシさんも言ってた。もう離れちゃったけど7年してたんだってね」
「依里奈」

 すぐ近くからアイツに
 不意打ちで名前を呼ばれたものだから、

「……なに」

 ドクンと心臓が大きく揺れた。

「お前が楽しそうにアイスホッケーについて語ると。俺は嬉しい」