氷河くんのポーカーフェイスを崩したい。

 …………え?

「それとも。過去の自分を知られさえしなければ、この先、一生この世の人間は自分のことを嫌いにならないとでも驕っていますか」
「まさか」
「だったら自分を苦しめるような――言い換えるならば君に不必要な人間のことなんて、相手にするだけ時間と体力の無駄です」
「バッサリ言いますね」
「私は。ヒトという生き物がそんなに好きでもありませんから。付き合う相手は選びます」

 なんでこのひと教育者なんてやっているんだ、と甚だ疑問だが。

 めちゃくちゃなようで的を射ている発言は、不思議とわたしの心を軽くしてくれる。

 小学生のときに出会った優しくおっとりした保健室の先生とはイメージが違いすぎるけれども。

「君の鞄を持ってきた少女は。君の過去を知って笑い者にするでしょうか」
「……沙里は」

 そんなことしないって、思いたい。

「余計なレッテルをはがせないのは。誰ですか」

 それは、わたし自身。

「無責任かもしれませんが。私には、彼女は君を本気で心配しているように見えましたよ」
「……っ」
「それに。単に仕事で紅茶をご馳走しているわけではないのです」