#18 フジサン


「まるで眠り姫ですね」

 ――――?

「美しい。そっと口づけをして目を覚ましたならば運命の相手だ――と錯覚してしまいそうなほどに」

 ……口づけ?

「ですが残念。君は未成年でした。私たちが結ばれるとしたら童話の世界の中ですね」

 なんだなんだ?

「さて。そろそろ昼休みです。まだ眠っているというなら、それでもいいですよ。随分と寝不足のようですから」

 ハッとして瞼を開けると、

「おや。起きましたか」

 丸いメガネをかけ、肩につく程度の黒髪をうしろに束ねた細身の男性がいた。

「……誰」
「養護教諭です」

 ――ヨウゴキョウユ

「こんにちは。纐纈依里奈さん」

 保健室の先生、男なの……!?