おうおうおう。

「可愛いのに優しいし、校内にファンもいるってPRしておいたよ!」

 するな。

「店長いわく問い合わせの電話やメール殺到してるらしい」

 ネットの拡散力を舐めていたわけじゃ、ない。

 なんとなしにインターネットに載せた写真が、瞬く間に世界中に広がる時代という認識ならあった。

 だからこそ、利用しないわけで。

「どんな問い合わせなの」
「話題のあの子を独自取材させて欲しいって。テレビ局とか情報サイトの人間から」
「て……テレビ」
「すごいじゃん、エリナちゃん。このままデビューしてタレントとかなれちゃったりするかもよ」

 桜、あんたはわたしの個人情報広めないでいてくれたらそれでいい。

 余計なことは言うなよ……?

「しばらく来ない方がいいかも。一般人に紛れて取材目的の人間がエリナ来るの待つ可能性あるし」

 飲み放題なのに。

 あらゆる誘惑に負けず静かにテスト勉強するには快適な空間なのに。

「エリナちゃん目当ての客、絶対増えるよね!」

 なによりあの店には、当麻氷河が働いてるとこが見られる特等席があるのに。