「つるまないし。わたしは、忙しいの」
「へえ。何に」
「……それは」

 オシャレとか。色んな情報収集したり。

「井上の誘拐するのに忙しい?」
「かわいくあることにだよ!!」

 コイツ、井上とわたしのことずっとネタにするつもりだな?

「そんな爪して。よく紙ヒコーキ折れるな」

 当麻氷河の視線がわたしの手元を捉える。

「かわいいでしょ?」
「さあ」
「かわいいじゃん!」
「それの良さが俺にはわからない」

 だとしても、ここは、可愛いねーって言っておけばいいものを。

 否定までしてきてさ。
 ほんと対話スキルないヤツだな。

「なにかあんの」
「ネイルのこと?」
「進路希望調査のプリント出さない理由」

 あったとしてあんなに関係ない。

「そっちこそ。出すのギリギリだったね」
「すっかり忘れてたんだ。駅の改札通るときに気づいて」
「わたしなら絶対忘れたままにするやつだ」
「戻ってきてよかった」