#12 俺だけにして


 ――俺だって欲しい

「……欲しい? なにを?」

 わけがわからない。

「纐纈依里奈」
「な、なんでフルネーム」

 なにこれ。

「それを言うなら。お前もだろ」
「なんか。……呼びやすくて」

 ――当麻氷河

「生意気なんだよ」

 わたしを抱きしめる腕に力が加えられる。

「ナリさんのこと呼び捨てにして」

 ふと、気づく。

「タメ口使って」 

 耳元でアイツの心臓が、大きく鼓動していることに。

「それは……。成澤がめちゃくちゃだから」

 当麻氷河がわたしのこと

 ……欲しい?