沙里の声に反応して顔をあげる。

「うしろ」

 振り返ってみると、教室後方の扉から当麻氷河が入ってきた。

 誰に挨拶をすることもなくまっすぐ窓際の席まで歩いて行くと椅子を引き、着席し。

 鞄からテキストとノートを取り出す。

 予習……でも始める気?

 真面目か。

 無駄に姿勢いいな。

 今は一番うしろの席だけど、あれがわたしの前にいたら黒板見えないよね。

 ある意味先生からも見えなくて壁になるといえばなりそうだが。

「もしかしてエリナ。気になるの?」
「へ?」

 沙里に視線を戻すと、ニマッと含み笑いしているではないか。

「モテるのに彼氏作らないなーとは思ってたけど。ああいうのがタイプだったんだ〜?」
「ちがっ……!!」

 なに言い出すの。
 アイツがわたしのタイプ?

「ちょっとクールすぎるというか、浮世離れしてるし。エリナの隣に立たせると、彼氏というよりはボディーガードみたいに見えそうだけど」

 ないない。

 ボディーガードなんて募集してません。

 そもそもに、男なんてーー……

「協力できることあったら言ってねー?」
「しなくていい」
「エリナから好かれるなんて。当麻のやつ一生分の恋愛運使い果たしたな」

 ちがうのに〜!!