夏樹と空の恋物語


 妹の純菜は相変わらず忙しくて、なかなか実家には戻って来ない日々だが、週に1回は電話をしてきている。



 みんながそれぞれの場所で頑張っている。





 そして…



 まだ梅雨入りしていない6月に入った頃。


 夏樹と空の子供が無事に産まれた。

 
 夏樹が言う通り元気な男の子だった。


 夏樹にも空にも似ている可愛い男の子に「幸喜(こうき)」と名付けた。

 幸せと喜びを一度にくれた大切な子供という意味を込めて。



「幸喜。久しぶりだね」


 産まれたばかりの幸喜を抱いて夏樹が言った。


 空は、何を言っているの? と、驚いた目をしていた。


 でも、夏樹はとても愛しそうに幸喜を見ている。



 夏樹は見えないものが見えたり、死者の声が聞けたり、未来のことが見えたりとちょっと不思議な力を持っている、だから幸喜を見て何かを感じたのかもしれない。

 空はそう思った。







 

 出産後、空が退院して家に戻った頃から梅雨の時期に入り雨が多くなった。

 出産後はゆっくり休むようにと、樹利亜がしばらくいてくれることになった。

 産まれたばかりの幸喜に癒される日々。



 夏樹はそろそろ社長になって欲しいと忍から言われているが、副社長になってくれる人がまだいないからと言って、幸喜が大きくなるまでは忍に頑張ってもらうと言っている。





 よく寝て、よく飲んで、幸喜はとてもスクスクと育っている。

 まだ起きている時間は短くて、泣くことしかできない幸喜。

 でも見ているだけでとても可愛くて癒される。


 空は、雅もきっとこんなふうに自分のことを育ててくれたに違いないと思っていた。