夏樹と空の恋物語


 いつも暗い気持ちで食べていたお弁当は、今はとても幸せな気持ちで食べている空。

 
 以前、空に言いがかりをつけてきた崎山は。

 今は遠い支社に転勤になり、社長秘書は男性社員に変わっている。

 崎山に取り巻いていた女子社員も、他の部署へ移動になったり、アメリカ支社に転勤させられたりとみんなバラバラになってしまった。


 今はだれも空に言いがかりをつけてくる者はいなくなり、穏やかな日々を過ごしている。



 


 

 定時になり帰宅する空。


 駅前の綺麗なイルミネーションを見て、とても喜んでいる空。


 ずっとイルミネーションを見ても、楽しい気持ちになれなかった。

 喜んではいけない、私は犯罪者の娘なんだからと自分に言って気持ちを抑えていたのだ。

 だが今ではこうして、素直に喜んでいられる。

 

「空」


 声を掛けられ振り向くと、夏樹がいた。


「よかった追いついて」

「お疲れ様」


 ギュッと手を握り合って、微笑みあう夏樹と空。


 綺麗なイルミネーションを見ながら、手を繋いで歩いて行く2人は本当に幸せいっぱいに溢れている。


 辛い思いをしてきた分、空には幸せが人の何倍も感じられる。

 

 夏樹と出会って、遠い存在の人だとずっと思っていた空。

 しかし夏樹のほうから歩み寄ってきてくれた時は、正直嬉しかった。

 でもどこか引け目を感じていた空は、素直に夏樹の気持ちを受け入れることができなかった。


 こんなに優しくて素敵な人が、私を選んでくれた。

 今まで死んでしまいたいと何度も思っていた。

 でも今は生きていて本当に良かったと、心から思える…。


 夏樹の優しさが空を救ってくれた。

 そして亡くなった雅がずっと空を守ってくれていた。

 空が宗田ホールディングに転職してきたのも、必然だったのかもしれない…。