「あーあ…もっと早く、俺、空さんに告白しておけばよかったなぁ」
営業部の男性社員がお昼を食べながらぼやいている。
「なんだ? お前、空さんの興味あったのか? 」
一緒にいた男性社員がちょと意外そうに尋ねた。
「ああ、入社してきた時から気になってたんだ。でも、空さんって俺達の事を避けている感じだったからさぁ。話しかけれなくてさぁ」
「え? お前もかよ。実は、俺もなんだ」
「はぁ? お前も? 」
「なんとなくだけどな。でも、もう副社長のものだからな。あきらめるしかないぜ」
「そうだよな」
男性社員が空の話をしていると、お弁当を持って空がカフェテリアにやって来た。
ゆったりとした茶色いワンピースに、カーティガンを羽織って温かそうな恰好をしている空。
いつものように、ちょっと人から離れてお弁当を食べるのは変わらないままだ。
「あれ? 空さんって、もしかして子供できたのか? 」
話していた男性社員が、空のゆったりした格好を見て言った。
「ああ、そうみたいだね。なんか副社長が、すごく気を使っているし」
「そっか。幸せなんだね」
「産休に入ったら、そのまま退職するみたいだぜ」
「辞めちゃうのか? 空さん」
「そうみたいだな」
「つまんないなぁ、空さんいなくなっちゃうと」
残念そうにぼやいて、空を見ている男性社員。
空は現在、妊娠4ヶ月に入ったところだった。
入籍前に妊娠していたようだが、色々とバタバタしていて気づかなかったようだ。
入籍して間もなくして体調の変化に気づいて、すでに妊娠しているのが分かって驚いていた。
夏樹はすぐにでも仕事は辞めるように言ったが、空がもう少し稼ぎたいと言い出した事から産休までという約束で仕事を続けることになった。
お弁当は栄養を考えて夏樹が作ってくれている。
今日も美味しそうなお弁当を広げて食べている空。



