しばらく力也の不倫の話しは聞かなくなったと思っていたが。
まさか空とそんな中になっているとは…。
「ダメだ…やめさせないと…」
夏樹はそう思った。
それから夏樹は様子を見ていた。
仕事中は何も変わらずいたって普通の空と力也。
帰りも別々で、何も変わらない。
どうやら連絡はお互いメールか何かでとっているようだ。
様子を見ていた夏樹は、空の動きを見ていた。
無口であまり表情を表に出さない空は、何を考えているのかは分からない。
ただ何かを内に秘めていることは判る。
空の様子を見ながら、夏樹はどんどん空に惹かれてゆく自分を感じていた。
そんなある日だった。
夏樹が資料室へやって来ると、空が古い資料を調べている姿を目にした。
遠目に見た夏樹は、なんとなく空の表情が悲しそうに見えて胸がキュンとなった。
古い資料を見ていた空は、周りに誰もいない事を確認すると、資料を写真に収めていた。
そして、そのまま資料室を出て行った。
その日の帰り、夏樹は空を待ち伏せした。
空がビルから出て行くのを見計らって後を着けて行った。
駅前の歩道橋の上で、空は立ち止まり携帯を見つめていた。
そんな空に歩み寄って行く夏樹。
「藤野山さん」
声をかけられると、空は驚いた目をして振り向いた。
夏樹を見ると、そっと目を反らして携帯をしまう空。
「藤野山さん。ちょっと、話しがあるんだけど時間もらえないかな? 」
俯いて返事をしない空。
そんな空に歩み寄って、夏樹はそっと手を取った。
「大切な話しだから。ちょっと、強引だけど時間もらうよ」
そう言って、夏樹はそのまま空の手を引いて連れて行った。



