「なに? どうしたの? 」

「…す…好きです…夏樹さんが…私…」


 恥ずかしそうに、空はそっと顔をそむけた。


 そんな空が可愛くて、夏樹はギュッと空を抱きしめた。

「僕も、前よりもっと空さんが好きになったよ。…」


 そっと身体を離して、夏樹は空を見つめた。


「空さん。…僕と、結婚して下さい…」


 急に真剣な目をして夏樹は言った。


 夏樹の真剣な目に、空はドキドキと鼓動が高鳴るばかりで言葉が出てこなかった。


 
 夏樹は空の返事を待った。


「あ…あの…。私で…いいのでしょうか? …私、もう両親もいませんし…施設で育っているので、何も知らないことが多くて…その…」

「そんなこと気にすることない。知らないなら、これから覚えたらいいじゃないか。一緒に」

「…いいんですか? …私…暗いし…」

「暗いなんて思っていない。空さんは、慎重なだけだよ」

「…嬉しいです。…私のことを…必要としてくれて…」


 思いが混み上がって、空は泣き出してしまった。

 夏樹も目が潤んできて、空を抱きしめて一緒に泣き出してしまった。


「あのね、空さん。僕、初めて空さんを見たとき。この人と結婚するって思ったんだよ」

「え? …」

「空さんの後ろに、ずっとお母さんが見えていて。空さんを守ってほしいって、言ってた。好きって気持ちに気づいたのはちょっと後だったけど。見るたびに幸せになれて、本気の恋ってこれなんだって思った。…いつも、話しかけても逃げられるけど。空さんのハートは「ごめんね」って言っていたから…」

「…夏樹さんって、不思議な人ですね…なんだか、見えないものが見えたり。そんな未来がみえるなんて…」

「ああ、これは父さんの遺伝みたいだよ。父さんは、産まれる前の記憶がある人で。未来を知って、生まれてきたって言ってた。よく、危ない事を先に教えてくれていたよ」

「そうだったんですか・…」

「でも心配しないで。別に、変な人じゃないから」


 そらはクスッと笑った。

 そんな空が可愛くて、夏樹はギュッと抱きしめた。