夏樹に支えてもらいながら、空はリビングにやって来た。


「あら、起きて大丈夫? 」

 樹利亜が声をかけると、空は驚いた目を向けた。

「あ、ごめんなさい。初めまして、私、夏樹の母の樹利亜です」

「す、すみません。こんな格好で…藤野山空と申します」

「そんなに固くならなくていいわよ。夏樹から、話は聞いていたの。将来を考えられる人に、出会ったから。近いうち連れて行くって、言っていたのよ」


 
 ソファーに座った空に、樹利亜はお粥を持ってきた。


「はい。これ食べて、元気出してね。夏樹が、私の真似をして作ったの。っても美味しいわよ」


 お椀につがれた小粥は、美味しそうに湯気が立っている。

「有難うございます。頂きます」


 ゆっくりと食べ始める空。


 ちょっと手に力が入らないのか、時折れんげを落としそうになる空を見て、夏樹が隣に座って手を差し伸べた。

「僕が食べさせてあげるね」

「い、いいえ…大丈夫です…」

「恥ずかしがらなくていいから、まだ熱があるんでしょう? 」

 
 れんげに小粥をよそって、そっと空の口に持って行く夏樹。

 空は素直に食べさせてもらった。





 それからしばらく夏樹はずっと、空に付き添っていた。

 仕事をしながら空の家にいて、栄養のあるものを空に食べさせて。


 忙しい中でもとても充実した時間を過ごして、夏樹は満足していた。



 
 3日ほどすると空の熱もすっかり下がった。

 

 今日は休日で、夏樹も仕事が休みでのんびりしている。


「すっかり元気になれました。本当に、有難うございました」

 
 顔色も良くなり、久しぶりに空は心から笑えた。


「元気になってよかった。もう無理しないでね」

「はい。…」


 じっと夏樹を見つめる空。


「どうしたの? 」

「あの…」

 ちょっと頬を赤くして、空は目を伏せた。