「え? 何それ、そんなことを崎山さんが? 」

 まだ副社長室で仕事をしている夏樹の元へ、忍から電話がかかっていた。

(ああ、帰りのエレベーターで偶然だが。藤野山さんと、一緒になって声をかけたんだが。酷く怯えていて、様子がおかしかったんだ。どうしたのかと思っていたら、外で偶然話を聞いて納得した)

「もしかして、今日。誰もないカフェテリアで、空さんと話していたのを崎山さんに見られてしまったからかもしれないなぁ」

(なぁ夏樹。お前は、彼女とこれからどうしたいと思っているんだ? )

「僕は空さんと、結婚するって決めているよ」

(それなら、ちゃんと父さんにも紹介してほしい。そして、1日でも早く一緒に暮らしてほしい)

「え? 一緒に暮らすのは、ちょっと待ってよ。空さんの気持ちも、まだ聞いていないし」

(将来的になって事だよ。でも、崎山さんがエスカレートしないうちに。ちゃんと、守ってあげなくてはな)

「うん。それは分かっているよ」

(今日は、そっとしておいてあげたほうがいい。今は、何を言っても混乱するだけだ)

「分かったよ」

(いつでも歓迎するからな)

「うん。有難う」



 電話を切ったあと、夏樹はフッとため息をついた。



 すると。

 夏樹の携帯が鳴った。


 メールが受信され、確認すると空からのメールだった。

(夏樹さん。ご迷惑をおかけして、申し訳ございません。私、やっぱり貴方には不釣り合いだと思います。ごめんなさい、もう会いません…さようなら…)


 短い文で、空からの別れのメールだった。


 すぐに電話をかけたくなった夏樹だが、とりあえず落ち着くために深呼吸した。



 とりあえず仕事をかたずける事にした夏樹。