力也の逮捕で、母の雅の無罪が報じられ、空はやっと雅の無念が晴れたと喜びを感じていたが、13年も長い間、犯人扱いのままだった事と、そのせいで家族が酷い仕打ちに耐えてきたことを考えると複雑な気持ちだった。



 誰もいないカフェテリアで、空は一人で珈琲を飲んでいた。


 カップの珈琲を飲みながら、空は一息ついた。


「あれ? どうしたの? こんな時間に」

 夏樹がやって来た。


 
 空の前に座ると、夏樹は優しく微笑んでくれた。


「良かったね、これでもう何も怖くなくなったでしょう? 」

「はい…。でも…13年は長すぎて…」

「解るよ。ずっと辛かったよね? でもその分、これから幸せになろう。僕もついているから」


 そっと、夏樹が空の手に手を重ねた。

 空は素直に頷いた。


「あら? 藤野山さんじゃない? 」


 声がして顔を上げると、崎山がいた。

 相変わらず可愛いワンピースにハイヒールを履いて、髪もクルクル巻いて男を魅了する恰好をしている。



「あれ? 副社長? 藤野山さんと、何をしていたのですか? 」

「何をって、普通に話しをしているだけだけど? 」

「副社長が藤野山さんと? 」


 意外そうな顔をして、夏樹と空を見る崎山。

 
「崎山さんこそ、どうしたの? こんな時間に」

「社長の用が終わったので、一息入れようと思って来たんです」

「そう。じゃあ、僕達は先に行くね」


 行こう! と、空に目で合図して、夏樹は席を立った。

 空も夏樹に合わせて席を立った。




 カフェテリアを出てゆく夏樹と空を見て、崎山はちょっと嫉妬の目を向けていた。