夏樹の声に空はそっと頷いた。

 
 お互いが1つになった。


 痛みが心地よさに変って、空は幸せを感じた。



 この人を愛してゆく…好きだから…。


 やっと素直に気持ちを認められた空。


 夏樹も空と1つになり、なんとなく空の気持ちが伝わってきて喜びを感じた。




 外は心地よい8月の風が吹いていた…。






 


 朝方にうとうとと目を覚ました夏樹。

 可愛いピンク色の布団カバーに、白いシーツにピンク色の枕カバー。

 その光景を見て、昨夜、空と1つになったことを思い出した夏樹。


 腕の中でスヤスヤと眠っている空を見て、可愛い寝顔に幸せを感じ、そっと空の髪に触れた。


 柔らかくさらさらしている空の髪…。



「…ん…」

 空も、うとうとと目を覚ました。

 ぼんやりした視界に夏樹の姿が映ると、ハッと目を開いた天。


「ごめん、起こしちゃった? 」

 ちょっと小さめの声で言われて、空はそっと首を振った。

 
 ギュッと抱きしめられると、直接感じる夏樹の体温に、昨夜の事を思いだし空は赤くなった。


「…今、すごく幸せだよ。…ねぇ、1つだけ教えてくれる? 」

「はい…」


「佐久間部長とのことだけど。本当に、関係を持っていたのかい? 」


 尋ねられ、空はちょっと困った目をした。


「違うよね? 」

「それは…」

「だって、初めてだったじゃん」


 ツンと夏樹は空の額を突いた。


「…佐久間部長とは、関係を持たことはありません。いつも、お酒を飲む人なのでお酒の中に睡眠薬を入れて。関係を持ったふりをしていただけです」

「そっか。よかった、何もなくて。安心したよ」

「…ごめんなさい…。どうしても、聞き出したいことがあって。近づいていたんです」

「そうだったのか。それで、聞き出すことはできたの? 」

「はい。…あの夜。…佐久間部長から聞き出したパスワードで、佐久間部長がずっと横領していた証拠を手にしたんです」

「横領? そんなことがあったんだ」

「はい。詳しくは、もう少し待ってください。話しますから」

「分かったよ。もう、心配しなくていいから。僕が、傍にいるから」

「…はい…」


 夏樹の腕の中はとても安心できて、空にとっては今まで張りつめていたものがスッと取れてゆくように感じた。


 誰かと一緒にいる安心感。

 ずっと…求めていた…。

 この幸せを失いたくない…。


 空はそう思いながら、再び眠りについた。