着信が鳴りやむと。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
ビクッとした空。
そっと足音を忍ばせて、モニターを見ると。
そこには夏樹が映っていた。
「どうして? 」
何かが混み上がってきて、空は分からないが涙があふれてきた。
このまま無視を決め込んで出ないでおこう。
そう思う中、せっかくここまで来てくれたのに…と、どこか申し訳ない気持ちが渦巻いていた。
迷った空だが、玄関のドアを開けた。
空が玄関を開けると、呼吸が乱れ、泣きそうな顔をしている夏樹がいた。
そんな夏樹を見えると、空の胸がキュンと鳴った。
「…ごめんね…」
玄関の中に入った夏樹は、そっと空を抱きしめた。
どうして抱きしめてくれるのか、空は驚いて声も出なかった。
「好きだよ…空さん…。初めて見たときから、ずっと好きなんだ…」
好き? 私を? どうして?
彼女がいるのに?
なんで?
驚いて、空は頭が真っ白になってしまった。
「空さんが、駅前で何度も佐久間部長と一緒にいるのを見たよ。見るたびに、モヤッとして苦しかった。…ずっと、やめさせなくちゃって思っていて。…今日もね、空さんが佐久間部長と死角になる場所に入って行ったのを見たからわざと呼んだんだ。…」
「どうして? …副社長には…素敵な彼女がいるじゃないですか…」
「え? 誰のことを言っているの? 」
崎山さん…。
そう言いたい空だが、喉に張り付いて言葉が出てこなかった。
「空さん…」
ふわりと、夏樹の唇が空の唇に重なった。
キス? どうして?
突然のキスに、空は頭が真っ白になった。



