夏樹と空の恋物語


「ずっと気になっていたから。藤野山さんが入社してきた時から、ずっと。特に調べたとか、そんなんじゃないけど。藤野山さんのお母さんが、心配していて。僕に教えてくれたんだ。ずっと、藤野山さんにはつらい思いばかりさせて申し訳ないって。でも、お母さん言っていたよ「私は無実なんです」ってね」


 泣きそうな目を見られたくなく、空は背を向けた。


「藤野山さん。僕は…」


 空は走り出した。


「あ、待って! 」


 


 全速力で走って来る空。


 夏樹も全速力で、空を追いかける。




 走って…走って…

 

 空はそのまま、自分の家に帰ってきた。



 

 玄関のドアを閉めて。

 そのままリビングに来て、ソファーに突っ伏す空。


(お母さんが言っていた「私な無実なんです」って)
(僕は藤野山さんを守りたいんだ)


 夏樹の言葉が頭の中を何度もよぎった。


「何言っているの…ちゃんと彼女がいるくせに…」


 ギュッと拳を握り締めて、空は悔しさが混み上がってきて泣き出してしまった。


 ブーッ…ブーッ…。

 空の携帯がカバンの中で鳴り出した。



 起き上がって着信を見ると、知らない番号からだった。

 
 空はそのまま無視をした。