夏樹と空の恋物語


 後ろからポンと肩に手を置かれた。

 
 力也ではないと空は思って、振り向いた。


 するとそこには夏樹がいた。


 はぁ? なんで?

 そう思った空は、ちょっとムッとした目を向けた。


「誰かと待ち合わせ? 」

 
 あのカフェの時と同じ、優しい笑みを向けてくれる夏樹。

 しかし、どこかイラっとしている空はあえてムッとした表情を浮かべた。


「何か怒っているだろう? 僕のこと」

「別に…怒る理由なんてありませんから」


「だって、昼休みから様子が違うじゃないか。なんだか、傷ついた顔をしているから」

「別に…」


 フッとため息をついて空は歩きだした。

「あ、待って」


 


 追いかけて来る夏樹をよそに、空はどんどん歩いてゆく。


「ちょっと待って、誰かを待っていたんじゃないの? ねぇ、いいの? 」



 夏樹の言葉を無視して、空はそのまま歩いて行った。







 歩道橋の上にくると、ピタッと足を止めた空。


 夏樹もそれに合わせて立ち止まった。



 空は冷たい眼差しを向けて夏樹を見た。


 そんな空に、夏樹は胸がキュンと痛んだ。



「私に関わらないで下さいって、言いましたよね? この前」

「うん…そうだけど…」


「じゃあもう、今後一切、関わるのをやめて下さい」

「どうして? 」


 ふいっと空は視線をそらした。


「私…犯罪者の娘ですから…」

 
 シーンと、空気が冷たく重くなった。


 空は辛そうな目をして、ギュッと唇をかんだ。


「知っているよ、そのことは」

 
 知っている? どうゆうこと? 

 空は夏樹を睨みつけた。


「前に言っただろう? 藤野山さんのお母さんが、ずっと後ろにいるって。そのお母さんが、教えてくれたよ。藤野山さんが、そのことでずっと苦しんでいるからって」

「そう…。知ってて、私に近づいたの」


「近づいたとか、そうじゃなくて。僕は、藤野山さんを守りたいから」

「…何言ってるんですか? 」


「だって、お母さんの無念を晴らしたいんだろう? 無実だったお母さんだから」


 ギュッと唇をかんで、空は俯いた。