「そういえば芽唯はピアノやってたの?興味もないのに普通野山惺のピアノに惹かれたりしなくない?」

「昔.....少しだけね」

「え!?全然あの3人のことも知らないみたいだったからてっきり興味ないんだと思ってた」

「.....まぁね」

何がまぁね、なのか自分でもわからなかった。

「今はやってないの?」

「うん。やめちゃった」

「私、聴いてみたい!」

「ごめんね。もう弾かないって決めたの」

「え?どうして?」

「ピアノが憎くてたまらないから」

.....こんなこと2人に言ったってしょうがないのに。

「そんなことないでしょ?憎いならピアノに惹かれていったりしないわよ」

「.....」

違う。

本当に憎くて憎くてたまらないんだ。

でもそれ以上に.....

愛しくてたまらない。

「私さ.....2人に嘘ばっかりついてるよ。それはまだ2人には言えない。嫌だったら関わらないでいいよ」

「どうでもいいよそんなの。芽唯は芽唯。たとえその名前自体嘘だったとしても私は芽唯が好きなの。そう簡単に離れたりしないよ」

「.....奈穂」

「そうよ。言いたくなったら言って。どんな嘘だろうと私も離れたりはしないわよ」

「.....時雨」

中学3年間感情すら消えた私はそれを取り戻すかのように泣いてばっかりだ。

「.....ありがとう」