きらきら星に魅せられて

つかつかとヒールを鳴らして誰かが近づいて来るのがわかった。

「ねぇ、あなた。そんな格好で何しに来たの?」

1番関わりたくなかった真城星羅。

無性にイラついて気づいたら声が出ていた。

「ピアノを聴いてもらうために来たんです。あなたたちみたいに本番前に人の悪口言うために来たわけではありません。集中したいので話しかけないでください」

「なんですって?下手なくせにそんな口の利き方するなんてあなたおかしいんじゃないの?」

「私はあなたより下手かもしれませんが、あなたより本番にかける思いは強いです。それに口の利き方に下手も上手も関係ありません」

「そんな格好で思いは強い?どうせ全国大会に滑りこんだとかでしょう?せめてここにいる人のなかで1番上手く弾いてからにでもその言葉、言いなさいよ。いやそれは可哀想すぎるわね、私を抜かしたここにいる全員ってことでいいわ」

「わかりました。だから集中したいって言ってるじゃないですか。もう話しかけないで下さいね」

「あなた、言ったからね?きっちり見届けてあげるわ」

もう私は喋らない。

こんなに喋ったのも、もちろん言い争ったのも生まれて初めてのだった。

「あんなこと言っちゃうなんて.....」

「無理なら無理って言えばいいのに」

私はそんな声を軽く聞き流し、演奏をするための最終準備に取りかかる。



「1番森本紗夜さん。曲目.....」

その日の出番は一番最初。

さぁ、最高の演奏をしよう。

この会場の天井に満点の星空を作り出すんだ。



鳴り止まない拍手。

自分のできる最大限の力を出し切った。


呆然とした顔をしながら私を見る人たちの横を通り抜け、舞台袖を出て大好きなあの人の元へ向かう。