ファイナル1日目。

「おはようございます。審査委員長」

「おはよう、森本紗夜さん。いい加減にその呼び方やめてくれないか?」

「ならなんてお呼びすればいいんですか?」

「ユゼフとでも呼んでくれ」

「わかりました。ユゼフさんとお呼びします。それにしてもいいんですか?審査委員長がコンテスタントとそんなに話しても」

「.....知らないよ。別にいいんじゃないか?」

「うわぁ.....適当ですね」

「いいんだよ別に。あ、そうだ。ずっと気になっていたんだ。今、堀田郁花はどこにいる?君の先生だったんじゃないのか?」

「先生は私を庇ってトラックに.....。今も眠り続けています」

「.....すまん。こんなこと聞いて」

「いいんです。.....ショパンコンクールで優勝することは先生との約束なんです。先生は私を恨んでいるかもしれないし、私を庇ったこと後悔してるかもしれないけど、例え今の先生がどう思っていようが、約束は約束。だから私は優勝したいんです」

「.....堀田郁花はこんな生徒を持って幸せもんだな」

「.....え?」

「きっと喜んでると思うよ」

「そうだと.....いいな」

「そうさ。それに君の演奏には人を惹き付ける魔法がある。現に生徒をとらない主義で有名なルイスが見込んだ生徒だからな」