そんなわけで星羅ちゃんと会場を出る。

そのときだった。

「紗夜」

聞き覚えのある声に体がビクッと反応する。

「ちょっと話そう」

「嫌だ」

どこまでも付き纏ってくるのはやめて、お兄ちゃん。

「ふぅん。じゃあ」

また強引に手を掴まれ、建物の影に引きずり込まれた。

「紗夜!」

「いいの?今逃げたら.....」

目で星羅ちゃんがいる方を指すお兄ちゃん。

「.....星羅ちゃん。すぐ戻るからそこから動かないで」

「でも.....」

「お願い」

「.....わかった」

もういい加減にお兄ちゃんから逃げるのはやめよう。

覚悟を決めないと。


「なんの用?」

「随分と強気だな」

「.....早く終わらせたいの」

「じゃあ早く終わらせようか。落ち着いているところを見ると知らないんだな」

「.....何を」

「お前がもうすぐ本物の人殺しになるかもしれないってことだよ」

「え.....?」

「堀田郁花の容態が危険な状態らしい」

「う、嘘だ.....」

「本当だ。それで?人殺しさんはまだこんなところでピアノ弾いていていいの?」

「.....私は人殺しじゃない」

「まだそんなこと言ってんの?堀田郁花はお前のせいで死んだのに。恨むならせいぜいピアノでも恨んどけば?」

―――お前のせいで死んだ。

その言葉は衝撃的だった。

自分では理解してても人から言われると重みが違う。