第1次審査2日目。

「お嬢さん。おはよう」

「おはようございます」

今日も昨日のおじさまに会った。

「昨日のショパンコンクールは聴いたかい?」

「はい。1番の演奏をしか聴いていませんが」

「まぁそうだな。あの演奏聴いたらピアノ弾きたくなるのもわかるよ。それじゃあ日本人の演奏は聞かなかったんだね」

「日本人.....あ、野山惺ですか?」

「そうだよ。とても上手だった」

「惺くんは.....上手ですよ。あのピアノには何度救われたかわかりません」

「あの子のピアノは人を癒す力を持っていたね。日本人は他にあと1人、本命がいると聞いたが」

「星羅ちゃんですか?」

「そうそう、そんな名前だったな。私はね、日本人に大好きなピアニストがいるんだ」

「.....?」

「君は知ってるかな?堀田郁花というんだ」

「.....っ!?」

こんなところで先生の名前を聞くとは思わなかった。

「なんだいその驚いた顔は」

「いえ。なんでもないです」

「そうか。まぁそれで私も日本人の演奏には興味があるんだ」

「そ、そうなんですね」

「そうなんだよ。そういえば君の名前を聞いてなかったな」

「すみません。今ちょっと事情がありまして答えられないんです」

「事情.....?まぁいい、どうせ君が舞台に出てくればわかるさ」

「ありがとうございます」

「じゃあまた明日会おう」

「はい」