きらきら星に魅せられて

「1番 アメリー・ニコラ。フランス」

ステージに出てきたフランス人の女の格好は異様だった。

色あせたワンピースにボロボロの靴。

よくもこんな場に出てきたものだ。

でも弾き始めた彼女の演奏は.....

衝撃だった。

ショパンのエチュード10ー4。

そんな難曲をめちゃくちゃな指遣いで弾いていく。

最初から勢いを出しすぎたら、最後まで体力が持つはずないのに.....。

そんな私の心配を他所に最後になればなるほど体力が尽きる素振りすら見せず、パワフルに弾いていく。

なぜだろう。

彼女の演奏は人の心を打つんだ。

疾走する馬がこの会場を駆け巡る。

勢いを増していく馬を見ながら、私は唖然としていた。


「これは.....」

隣の審査員からも驚きの声が上がる。

湧き上がる歓声と拍手。

コンクール会場とは思えないその雰囲気に慌ててスタッフがアナウンスを入れている。

「これでこそショパンコンクールだ」

無意識にふっと笑みが漏れたのを感じた。