「紗夜。お兄ちゃんちょっと行ってくるから少し待っててな」

「うん.....」


お留守番なんてした事がなかった。

誰もいないことが寂しくてつい家を出てしまった私。

きっとお兄ちゃんは猫のところにいるだろうと思い、またあの場所に向かった。

電柱の影に隠れ、そっとお兄ちゃんの方を覗いてみた。

「ごめんな、俺が遅かったから。ごめんな」

そこには猫を抱きながらすすり泣くお兄ちゃんがいて。

「.....お兄ちゃん?」

「紗夜?どうしてここにいるんだ」

「寂しかったから.....」

「お前のせいでこの猫は.....。お前がいなければ助かったかもしれないのに.....っ」

「.....っ」

そんなふうに責められたのは初めて。

怖くて怖くて大声で泣き叫んだ。

「うるさいっ。帰ってろ」

そのあとは何が何だかわからないまま1人で家に帰った。


あの日からだった。

お兄ちゃんが豹変したのは。

私に向かって毎日のように暴言を吐き、殴られたりもした。

全てお母さんとお父さんにはバレないように。

「お兄ちゃ.....ん。やめて.....」

「うるさい.....っ」

もう誰も信用できなかった。

何もかもから心を閉ざし、誰とも関わらないと決めた。

お兄ちゃんはそのあと出て行ったらしい。

まだ小学生だったのにどうやって生きて行っていたのかは知らないが。

少年院にでも入ったのではないかと私は疑ってるけどね。